1.バックパッカーはカオサン通りを目指す

前置き。はじめてのバックパッカー旅行

団体ツアー旅行、日中フリープラン旅行と過去2度の海外旅行を経験して、ようやくすべて個人手配による一人旅を行うことにした。山登り用のバックパックを担ぐスタイル。つまりバックパッカーだ。
時は、1997年。猿岩石の影響もあるのか、バックパック旅行がブームになりつつあった。実際は以前から多くの旅行者が個人で海外を放浪していたが、世間一般的にはあまり知られていなかっただけだろう。

目指すはユーラシア大陸横断。

と、大言壮語したいところだが、そんな気力も体力もないヘタレなので、タイとネパールでお茶を濁すことにした。
目的地はヒマラヤ。できればエベレストをこの目で見てみたい。
素人に登頂など不可能だ。でも、どうせなら、地上で最も高い場所を己のまぶたに焼き付けようではないか。
が、まずはエベレストの前に、カオサン通りを目指すのが由緒正しきバックパッカーの行動様式である。

そんなわけで、バンコク経由のカトマンズ行きの航空券を手配。
この1997年当時は、インターネット経由で航空券を買うことができなかった時代だ。旅行会社に頼んで、格安航空券を手配するしかなかった。
無事に航空券は手に入った。
宿はすべて現地で見つける。
期待と不安と重い荷物を肩に感じながら、初のアジア・バックパック旅行に出かけたのだった。
今から振り返れば、それほど大したことはないのだが、何事も初の試みには緊張するものだ。それも海外一人旅である。油断は禁物。
旅行当時に詳細な日記を書いていたので、その記述を基に、現在の情報なども交えつつ、旅行記を綴っていきたい。
初めてアジアをバックパック旅行したいと考えている人の参考になれば幸いである。

バンコクへ

まずは、関西空港からタイ国際航空に乗ってバンコクまで。

マニラでトランジットがあった。
トイレに行くと、お兄さん二人が案内してくれて、蛇口はひねってくれるは、紙は取ってくれるはと、気持ち悪いくらいに親切。でも、案の定、チップを要求してきた。手には千円札を握りしめている。
もちろんあげなかったけど、国際空港内でこんなことが行われているとは驚きだった。
ちなみに、現在のマニラ空港でもあまり事態は変わっていない。
去年の話だが、喫煙所を探していると、係員らしき人物に案内された先がトイレの個室。ここで吸えと言う。むろん、喫煙は禁止されている。おそらくチップを要求するか、違反をとがめてワイロを要求するかのどちらかだろう。
フィリピンのイミグレーションでチップを要求されることもある。
給料が安いせいもあるだろうが、フィリピンは公務員の腐敗がひどい。まあ、ダメもとで言ってみているだけだろうけど。

さて、無事にバンコクに到着。
この時はドンムアン空港だ。現在のスワンナプーム空港は影も形もない。
イミグレーションに並んでいると、日本人の旅行者に声をかけられた。同じ大阪出身で年も同じくらい。ここではM君と呼ぶことにする。
そのM君と一緒にカオサン通りへ行くことになった。さっそく心強い旅仲間ができた。

まず空港で両替を済ます。1997年当時のレートは、1バーツが約4円弱。
2015年現在は1バーツが約3.7円だ。

一見するとバーツが弱くなっているようだが、タイの物価は年々上がり続けており、結局は相殺されてしまうので、日本円にすると同じような値段になる。
たとえば、1杯25バーツだったラーメンが、現在は35バーツほどに値上がり。でも日本円に換算すると、おなじく100円程度といった具合だ。
ただこのままの調子でタイの物価が上がり続けると、日本との格差もかなり縮まってきそうだが。

カオサンまではエアポートバスを利用。
当時はこれが一般的なカオサンへの行き方だった。片道70バーツ。
旅慣れていて、より節約したい人は、ローカルバスを使っていた。合言葉は赤バス59番。エアコン無しで激安。

現在のカオサン通りへの行き方
ドンムアンからスワンナプームへと国際空港が移転してからも、カオサンへ行くにはエアポートバスが手軽だった。徐々に値上げしていき、最後は150バーツ。よくよく計算すると、かなり割高だが、それでも初心者には心強い存在だった。エアポートレイルリンク(高架鉄道)の開通にともない、2012年に廃止となった。
市バスを使うのが安上がりだが、ハードルは少々高い。現在、スワンナプームからカオサンへの直行バスはないようだ。ローカルバスを乗り継ぐ必要がある。これは初心者にはかなりハードルが高い。
空港タクシーを使うと高速代や配車手数料など合わせて350バーツから400バーツほどだろうか。乗り場は空港1階。「PUBLIC TAXI」と看板の上がったカウンターがある。
メーターを使うのが大原則なので、タクシーに乗り込んだら、メーターを必ず倒させよう。
メーターのことは「ミーター」と発音すると通じやすい。「ミーター、ミーター」と連呼してもメーターを使おうとしないタクシーはぼったくりタクシーの可能性が高いので、その場で降りて、別の車に乗り換えよう。
何人かでタクシーをシェアするのがベストだが、一人で乗ると少し高い。
そこでエアポートリンクを使い、最寄り駅まで移動。そこからバスということになる。
まず、エアポートレイルリンクのCITY LINE(普通線)でパヤタイ駅まで。30分弱。たぶん45バーツ。ちょこちょこ料金が変化するのではっきりしないが、まあ安い。
ここから民主記念塔方面へのバスに乗ればいい。番号は59番。空港は変われども、59番のバスは健在だ。が、タイのローカルバスはやはりちょっと難しい。
乗り場を見つけられなかったり、道に迷ったりしたら、迷わずタクシーを利用しよう。パヤタイからカオサンまでは100バーツもかからないはず。
民主記念塔からカオサン通りまでは歩いて5分ほど。
ここはタイかというほど欧米人を目にするので、彼らに聞けば詳しく教えてくれる。
まあ結局はタクシー利用が無難という身も蓋もない結論に達してしまうが、日本よりはるかに安い初乗り運賃(35バーツ。約110円)を考えると無理にローカル移動手段にこだわる必要はない、と今は思う。

カオサン・ロードへ

さて、エアポートバスに無事乗りこんだ、大阪人二人。
車窓の外を流れる風景は、近代的なビルの立ち並ぶ大都会であった。あまり日本と変わらない。生えている木々が南国風な点が違うくらい。ミシュランの広告のタイヤマンが手を合わせて礼をしているのがおもしろかった。
現在では、バンコクはさらなる発展の一途をたどり、巨大なショッピングモールが林立するほどの過熱ぶり。もはや東京や大阪と遜色ないほどの大都市となった。

無事にカオサン通り到着。
通りに足を踏み入れる。
衝撃。

なんじゃ、ここは?!

というのが、率直な感想だった。
土産物屋、雑貨屋、屋台、それにもちろんゲストハウスまでもが所狭しと道沿いに並んでいる様は圧巻。通りは歩行者天国になっていて、世界中から集まった旅行者であふれかえっている。多くは欧米と日本の若者たちだ。
世界有数の安宿街と呼ばれるだけのことはある。
まさにカオス。
もう別世界だ。

カオサン通り
photo credit: Khaosan Road, Bangkok via photopin (license)

その雰囲気に圧倒されながらも、何食わぬ顔を装つつ、今晩の宿を探した。
疲れていたので、ガイドブックに載っている有名な安ゲストハウスへ。
風呂トイレ共同のツインルームが1泊120バーツ。一人あたり60バーツ。約240円。
一泊して240円。日本の物価に慣れきった身には、衝撃のプライス。
部屋は狭く、薄汚れている。ベッドもぼろぼろ。シーツは最後に洗濯したのはいつなのか不明。天井のファンはほこりまみれ。
共同トイレの汚さにさらに衝撃。お、お、汚物がぁ。
まあ、気にしない。
とりあえず一晩寝れたらええやん。
と、二人で納得しあい、部屋をシェアした。
こういう時は旅の仲間がいると心強い。
10年後に再訪した際のゲストハウスの写真。昔よりは若干、清潔度を増していた。写真のモデルはM君とは別人です。

カ オサン通りゲストハウス

カオサンの一本脇にある通りの屋台で夕食。
肉汁たっぷりのあんかけ太麺。25バーツ。約100円。
タイ風ラーメンと日記に書いているが、おそらく「ラートナー」のこと。
肉と野菜の具もたっぷり。
うまくて安い。大満足。

そのあとは、カオサン通り沿いにあるレストランでビールをのみつつ、街角見物。
肌にまとわりつくような熱気と、人いきれの喧騒の中で飲むシンハービールは、格別だった。ああ、異国の地にやって来たんだ、と実感した。

まあ、カオサンは、タイの中でもあまりにも特殊なエリアなので、タイに来たというよりもカオサンに来たと捉えるのが正しいだろうけど。
途中から、別の日本人も加わり話をするようになった。
インドやネパールで数カ月沈没してきたそうだ。ヨレヨレの身なりで髪もぼさぼさ。いかにもバックパッカー然とした人。
「日本では到底やっていけないタイプだろう」と、日記にはひどいことを書いている。
行方不明者やドラッグといったバックパッカーにまつわる濃い話をいろいろ聞かせてもらった。
むう、やはり世の中にはいろんな人がいるものだ。
旅に出てみると、そういった人たちと直に会う機会が持てる。これも旅の醍醐味だろう。
ゲストハウスに戻り、水シャワーを浴びてから、就寝。

滑り出しは順調そのもの。
「この旅はとても楽しくなりそうだ」と興奮気味な筆致でこの日の日記は締められている。
一度はおいでませ、カオサンへ。できれば若いうちに。

スポンサーリンク
アドセンスレクタングル大
アドセンスレクタングル大
  • このエントリーをはてなブックマークに追加